任意売却という選択肢を知っておこう｜住宅ローンの返済に困ったら
昨年から、コロナ禍で住宅ローン破綻に陥る方が急増していることが問題になっているという報道を度々目にします。住宅ローンの滞納や延滞が続くと、最終的に自宅を競売にかけられて家を失うことにもなりかねません。
強制的に競売にかけられてしまう前に、自分の意思で売却する「任意売却」という方法があります。
これからマイホームを購入する方、現在、住宅ローンを利用している方に、万一の時、リスクを回避する対策として知っておいていただきたい内容となっています。ぜひ参考にしてください。
コラムのポイント
・不動産の売却方法の「任意売却」について概要とメリット・デメリットが分かります。
・通常の売却と任意売却の違い、競売と任意売却の違いが分かります。
・任意売却を検討するタイミングについて紹介します。
・住宅ローンの支払いが難しくなりそうなとき、任意売却を考える前にできる対策が分かります。
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～table of contents～
任意売却とは？
任意売却とは、住宅ローン等の借入金が返済できなくなった場合、売却後も住宅ローンが残ってしまう不動産を金融機関の合意を得て売却する方法です。
住宅ローンを滞納、延滞すると、債務者（ローンを利用している人）はローンを分割で返済する権利を失い、融資をしている金融機関は住宅ローンの残債の一括返済を要求できます。
残りの債務を一括で返済できない場合は、金融機関は担保となっている住宅を強制的に売却して、売却金を残債の返済に充てます。この、不動産を強制的に売却する方法が「競売」と呼ばれる方法です。
・競売と任意売却の違い
競売は、裁判所が物件の所有者の同意なしに売却を主導する方法で、物件の購入者、売却額をオークション形式で決定します。
競売は室内の内覧などをせずに行われるため、通常の売却よりも安く売却されてしまう可能性が高くなります。
また、売却時期も裁判所が主導で決定されるため、明け渡しの日に余裕がなく、次の住まいが見つからないうちに退去しなければならなくなってしまう可能性も。
このように、競売は非常にデメリットが大きく、メリットがほとんどありません。任意売却は、後述するように売却後の残債の返済方法や返済額の希望などが通りやすいなどのメリットがあります。
ローンの返済が滞ってしまったら、迅速に金融機関に相談したり、住宅ローン返済の相談サービスなどを利用したりして、デメリットの多い競売を回避する方向で動いていくことをおすすめします。
・通常売却と任意売却の違い
一般的に、所有する物件を売却する場合は、その物件の住宅ローンをすべて返済して、抵当権を解除してから売却します。
任意売却が通常の売却と違う点は、
- 住宅ローンを滞納、延滞している状態
- 売却金や自己資金でローンを完済できず、借入金が残ってしまう
という2つの状況で、売却してもローンを完済できないが抵当権を外す必要がある場合に取るのが任意売却です。
そして、競売と比較した任意売却のメリットは
- 所有者が主導で競売よりも高値売却（市場に近い価格）が実現できるケースが多い
- 売却した後も無理なく残った借入金を返済していく方策を立てやすい
ということにあります。
任意売却のメリット
次に、競売と比較した任意売却のメリットをもう少し詳しく解説します。
・プライバシーを守れる
任意売却は、裁判所が主導する競売と異なり、あくまで通常の売却と同じ所有者と不動産会社が主導で行われます。そのため、近隣の人には住宅ローンの滞納などプライバシーに関することを知られずに済みます。
・残債が減り、月々の無理のない返済額を相談できる
任意売却の場合は現在の収入や生活状況から、ローン残債の現実的な返済方法を話し合いで決められるのがメリットです。
任意売却をした場合、自宅を売却することで得た売却金を使って、ローン残債をゼロにはできなくても、多少なりとも少なくできます。売却後は残った残債を支払っていくことになるわけですが、そもそもローンの返済ができなくなって任意売却を選ぶため、現在と同じ条件や月額で支払いを続けるのが難しいことがほとんどだと思います。
そこで、金融機関と協議して、無理のない範囲内で分割返済などの返済方法を検討していきます。
・引っ越し費用が捻出できる
売却後、次の住まいへの引っ越しには、引っ越し料金の他に、敷金・礼金や仲介手数料など初期費用も必要で、賃貸なら家賃の3～6ヶ月分+引っ越し費用が必要です。競売では物件を売却しても、その代金から引っ越し費用など次の生活のためにかかる費用を用意することはできません。立ち退きの日や引っ越しの日も、売却者の事情を考慮してもらえず、引渡命令で強制的に立ち退きさせることも比較的簡単にできます。
そのため、何の準備も資金もないまま、立ち退きしなければならなくなることがあります。
任意売却の場合は、交渉により最高30万円の引っ越し費用を売却代金から融通してもらえる可能性があります。
・リースバックで住み続けることも
ローンの支払いが難しいけれど、事情があって今の家を離れることが難しい、という方も非常に多くいます。任意売却なら、通常の売却と同じように、物件を購入する人を選べるので、身内や投資目的の方に売却して、家賃を支払いながら今の家に住み続けるという方法があります（リースバック）。
引越しをしなければならない場合でも、購入者に引越し時期に猶予をもらう交渉をすることもできます。競売と比べると、余裕を持って次の暮らしの準備ができたり、今の家に住み続けられる可能性が残されているのは大きなメリットになります。
・競売より精神的負担が少ない
競売は、自分の意思とは関係なく、裁判所が主導で進められていきます。そのため、競売によってかかる精神的負担は、任意売却よりもかなり重く、不安と混乱で正常な意思決定ができない状態に陥る人もいます。
任意売却の場合は、自分の意思で売却活動が行えるので、精神的な負担も軽くなります。売却価格も、競売よりは市場価格に近くなりやすく、引越しの時期なども希望に沿える可能性があるため、より前向きにこれからの生活を考えられるでしょう。
・諸費用の持ち出しが不要
通常の不動産売却の際には、仲介手数料や登記費用（抵当権抹消に関する費用）などの諸経費がかかります。任意売却でもこれらの諸費用がかかりますが、任意売却の場合は不動産の売却代金からこれらの諸経費を支払えます。
また、住宅ローン以外にマンションの管理費や修繕積立金、固定資産税などの税金の滞納があった場合も、売却代金から支払えるので、持ち出し金を用意する必要がないのも大きなメリットです。
任意売却のデメリット
競売と比較するとメリットの大きい任意競売ですが、デメリットもあります。メリット・デメリットの両方を理解した上で選択すること、そして、収入が減ったなどの悩みがある人は、住宅ローンの返済方法を見なおすなど、支払いに困る前に早く相談することが大切です。
・連帯保証人などの同意が必要
任意売却をする場合は、住宅ローンを借りる際、連帯保証人になっている人がいれば、その人に任意売却に対する同意を取らなければなりません。
連帯保証人関係で多いトラブルは、夫婦共同で住宅を購入したが既に離婚している場合などに多くあります。離婚して今は購入した家に住んでいない連帯保証人（元配偶者）に、任意売却したいことを伝えても同意を得ることが難しかったり、そもそも連絡をとれなかったりする場合が多くあります。
・債権者の求める金額が大きい、任意売却を認めていない
そもそも、対象となる債権者（金融機関）が任意売却をしないという方針の場合、任意売却することはできません。また、任意売却の販売活動で売却できる金額が、債権者が求める金額と差が大きい場合、債権者が任意売却を応諾してくれない場合もあります。
より市場価格に近い金額で売却できるか、その金額で債権者が応諾してくれるか、そして希望金額で購入してくれる人が現れるか、が任意売却の大きなポイントになります。いずれにせよ、任意売却を成功させるためには、早めの対策で売却活動や交渉のための期間を十分にとれることが重要になってきます。
こんな人は任意売却を検討して
住宅ローンの返済に今後困りそうという不安がある方へ、任意売却を検討すべきタイミングについて紹介します。
- 住宅ローンや固定資産税の滞納がある
- 売却してもローン残債を完済できない
- 住宅ローン返済が厳しいが、今の家に住み続けたい
- 離婚などの理由で売却したい
- 離婚後ひとりでのローン返済が厳しい
- 金融機関からの督促状・催告書や裁判所からの担保不動産競売開始決定通知書が届いた
任意売却を決める前に考えるべきこと
任意売却を検討するタイミングについて紹介しましたが、上で述べたうち、滞納する前や滞納して1ヶ月程度の場合は、金融機関やFPなどに相談して住宅ローンの返済方法や支払い方法、金額などを再検討（リスケジュール）し、「本当に住宅ローンが完済できないのか」を早めに考えて対応することが大切です。
できるならば、任意売却に至らず、今の家に住み続けることが最も良い結果なのですから、収入や返済に不安が出てきたら、絶対にひとりで悩まずに、できるだけ早めにローンの相談を受けましょう。
・信頼できる住宅ローン返済相談サービスに相談する
最後に、住宅ローンの返済で困ったときや、任意売却を検討したい時に相談できる一般社団法人を紹介します。
一般社団法人 全国住宅ローン救済・任意売却支援協会
一般社団法人 全日本任意売却支援協会
まとめ
任意売却は、売却代金でローンの残債を返済しきれず、不足分を自己資金でも補えない状況でも、抵当権を解除してもらって売却できる方法です。
任意売却は、債務者（物件の所有者）はもちろん、債権者（金融機関）の協力がとても重要になってきます。また、売却を担当する不動産会社・担当者が任意売却についての知識・経験が十分あるかどうかも任意売却を成功させるポイントになってきます。
返済に不安を感じたら、できるだけ早く金融機関や住宅ローン返済相談サービスに相談することであとが必ず楽になります。ひとりで悩まず、問題が大きくなる前に早めに相談しましょう。
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