AIを使ったマンション査定の特徴とメリットデメリット
最近の不動産業界では、AIを使ったマンション査定のシステムが広がりを見せつつあります。
AIに不動産売買の膨大なデータを学習させることで、有人サービスに近い精度の高い査定や売却価格の予想ができる、と注目されています。
実際に、現状のAI査定システムはどのようなものになっているのか、その仕組みやAI査定のメリット、デメリットや注意点について解説します。
今後、さらに高精度なサービスも増えていくと予想されますが、現段階の状況や見解として、利用の際の参考にして頂ければ幸いです。
コラムのポイント
・AIによる不動産査定の仕組み、概要が分かります。
・AIによるマンション査定のメリット、デメリットが分かります。
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～table of contents～
AIによるマンション査定とは
AIとはArtificial Intelligence（アーティフィシャル・インテリジェンス）の略称で、「人工知能」を指します。人工知能は、簡単に言うと言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に変わってコンピューターに行わせる技術です。囲碁やポーカーなど特定のゲームの分野では人間のトッププレイヤーをAIが破るなど、AI技術が近年加速度的に向上しています。
不動産査定におけるAI査定は、今まで人間のスタッフが行っていた不動産査定を、AIによって機械的に実行させるシステムになります。
AIに不動産査定の手順やデータ（過去の不動産取引の情報や不動産の知識）を学習させ、パターンを推測できるようにすることで、データに基づいた不動産の相場や売却価格予想を導き出します。
AI査定のメリットは「スピード」「匿名性」
人間が不動産を査定する際も、データを元にして予測を立てます。ただし、すべての過去の取引データや、最新の公示価格などの相場を頭の中に入れ、好きな時に瞬時に思い浮かべて比較する、なんてことは人間には不可能ですよね。
AIは、人間に学習できない大量のデータやパターンを覚え、それをいつでも取り出して比較し、推測結果を導き出せます。
AI査定は、インターネット上などで物件名や住所などを入力するだけで、瞬時に査定価格を表示できるのが最大のメリットです。
・匿名で気軽に査定できる
AI査定は、不動産査定を依頼するためにスタッフと対面する必要がなく、気軽に行えて、不動産会社から営業電話などが来るわずらわしさがないのもメリットと言えます。
ただし、AI査定を提供しているサービスの中には、ユーザー登録など一定の個人情報が必要な場合もあります。また、無料サービスでは過去のデータに基づく価格の推定にとどまるため、実際の査定価格は改めて不動産会社に訪問査定を依頼する必要があります。
AI査定は、今すぐに売りたいわけではないけど、将来のために、今自分のマンションがどれくらいで売れそうなのか参考相場を知りたい人にとっては適したサービスです。推定価格を知ることで、売却後のライフプランを立てる手助けにもなるでしょう。
・AIはマンション査定に向いている？
一般的な居住用マンションなら、同じ建物の別の部屋や、周辺の似た構造のマンションの取引履歴が分かれば相場を導き出しやすくなります。マンションの売買事例が多く物件が豊富な地域（大都市など）ほど、AI査定の精度も高くなりやすいと言えます。
また、マンション査定は、一戸建て査定のように、築年数や立地だけでは価値が決まりにくく、個別の物件の状態をしっかり見る必要があるケースよりもAIとの相性は良いと言えるでしょう。
AI査定のデメリット・注意点
・レインズが利用できない
AIが不動産を査定するためには、過去の売買記録を学習させる必要があります。
現在は、AIはレインズのデータを利用できないという大きなデメリットがあります。
レインズは、不動産会社が利用できる不動産物件情報交換のためのコンピュータネットワークシステムです。国土交通大臣から指定を受けている不動産流通機構が運営しています。専属専任媒介契約、専任媒介契約のいずれかを結んで売却を依頼された物件は、レインズに登録することが義務付けられています。
レインズでは、現在市場に出ている販売中物件を見られて、登録物件が売れた場合その価格も分かります。
レインズ上のデータは、全国の不動産会社が実際に販売している不動産データや、実際の成約価格のため、マンション査定にあたっては信頼性が高いデータとなり、より妥当で公正な査定がしやすくなります。
査定を依頼する側からしても、自社の取引データしか使わない査定よりも、他者も含めた様々な取引例を参考にした査定価格の方がより信頼できると思います。レインズのデータを使用していないAI査定は精度の面でどうしても不利になることは否めません。
・ネット上の「売出価格」は「実際の成約価格」とは異なる
AI査定はこのレインズのデータを使えないので、不動産会社の自社の売買データや、ネットで無料公開されている売出価格しか学習させられません。
しかし、ネット上で見られる物件の「売出価格」というのは、あくまで売主や不動産会社が希望している売却価格です。実際の成約価格は、売出価格よりも低くなることが多いです。築年数が30年を超えると、成約価格が売出価格より3割近く低くなるというデータもあります。
つまり、売出価格を使った査定価格は、実際の取引と誤差が起きやすくなるということです。
このように、会社によって査定システムやAIに学習させているデータベースに違いがあるので、AI査定のサービスによって査定額に違いがあって混乱してしまう可能性もあるのです。
・物件や成約事例が少ない地域では査定自体が難しい
AIのシステム精度は、学習させたデータの量によっても大きく変わります。つまり、もともと不動産取引の事例が少ない地域では、AI査定に十分なデータ量が得られず査定できないことがあります。
AI査定サービスの種類
AI査定サービス提供している会社は、大きく分けて「運営会社が不動産会社」のパターンと、「複数の不動産会社と提携している不動産ポータルサイト」の2種類があります。
前者の場合は、無料のAI査定の利用をきっかけとして、自社の訪問査定などを利用してもらい、実際に売却してもらうことを狙いとしています。
後者のポータルサイトの場合は、無料のAI査定を利用したあと、提携する複数の不動産会社に一括査定を依頼したり、一括媒介契約につなげたりすることを目的としています。
AI査定を利用するためには、電話番号や氏名は不要のサービスも多いですが、メールアドレスの登録は必須のサービスが多くなっています。また、登録できる物件は自分が所有しているものに限られていたり、登録できる物件数に限りがあったりする場合が多いです。
無料で個人情報入力は最低限という気軽さがメリットのAI査定ですが、利用する際は運営会社が不動産会社なのか、ポータルサイトなのかを調べ、利用規約を必ずチェックして、信頼できるサービスかを見極めましょう。
まとめ
今回は、現在日本の不動産査定、特にマンション査定で増加しているAI査定の仕組みやメリット、デメリットについて解説しました。
現状のAIによる不動産査定サービスは、物件の推定売却価格を素早く知れるメリットがあります。しかし、物件数の差によって地域によって査定ができない場所があったり、サービスを提供している会社によって学習データが異なり、またレインズのデータが利用できないことから、正式に対人で査定すると、結果に誤差が生じることもあります。
AI査定はあくまで、マンションや周辺地域の物件の価格相場、変動を知り、売り時を決める参考にするにとどめ、実際に売却を決めたら、信頼できる不動産会社に訪問査定を依頼することをおすすめします。
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