ご注意下さい、住宅売却時の相続トラブル

◆D-LINE不動産 不動産豆知識2021年 『江東区・墨田区・中央区・港区』

契約締結後に売主が亡くなられた売の不動産売買契約の取り扱いについて
不動産の売却を行うと不動産の所有権は売主から買主に移ることになります。しかし、もし所有権を移転する前に売主がなくなってしまった場合、そのまま買主へ所有権を移転することが出来るのでしょうか。 事例をもとに解説します。

Aさんは、高齢で持病の経過も芳しくなかったため子供たちに田舎の土地を残しても処分に困ると考え生前に処分したいという意向があり、Cさんに売却する旨の売買契約を締結。

売買契約では一か月後の決済を予定していましたが、決済予定日の5日前にAさんの容体が急変し、死亡したケース。

父親(A)が売買契約していたが決済直前に父が死亡してしまった場合、相続人である息子(B)はどうすればよいのでしょうか?

1.そもそも売主がなくなってしまった場合、売買契約はそのまま有効か?

→結論 売買契約を締結している場合、仮に売主の方が亡くなってしまったとしてもその契約は有効です。売買契約が締結したことにより売主と買主の双方に履行義務が生じます。売買契約締結後の双方の履行義務は、売主は不動産の引き渡し、買主は代金の支払いとなります。もし売主が亡くなってしまった場合には、売主の相続人の方がこの履行義務を果たす必要があります。

つまり上記事例による相続人Bは、相続により父親Aの売主としての地位を承継する形となります。だから、決済日の直前の死亡となれば相続登記をする必要があります。
相続登記を行う時間的余裕が限られるため、実務上では決済日の延期申し出をすることが考えられます。

相続人Bは、父親が亡くなってから初めて父が売買契約締結の事を知った。
決済直前に父親Aが死亡した場合、相続登記を行う時間的余裕が限られるため相続人Bは、決済日の延期合意が考えられます。

 

一方、買主のCさんが延期の合意に応じず、決済しないのなら違約金を支払えと言われたら、支払わないといけないのでしょうか。

 

売主から決済日の延期合意が申し入れられても買主は返済日を延期する義務はありません。売主が決済日に履行できない場合、違約金が発生する可能性があります。

ですが、父親から売買契約締結を聞いていない相続人Bは、急いで相続登記の準備をしたが、間に合わない場合でも違約金を支払わなければいけないのでしょうか?支払わなければいけないとなると、売主には随分酷なよう気がします。

そこで、民法では下記のような定めがあります。

≪新民法415条1項但し書き≫
債務の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして相手方の責めに帰することが出来ない事由によるものである時は違約金の請求はできない。
と定められています。

・被相続人が締結した契約の有無
・有効性の調査 未履行であるか否かの状況把握などに要する時間
・必要書類をそろえるための時間

等が必要な為、被相続人の債務を履行できなかった場合、取引上の社会通念に照らし違約金の請求が認められない場合があります。(ただし、責任が無いということは、債務を履行できなかった人が主張立証しなければなりませんので注意が必要)

ですので、買主(C)には決済期限の延期に応じる義務がないとはいえ、杓子定規に違約だと限らないので柔軟な対応が求められることになるでしょう。

まとめ

不動産売却で売主が亡くなってしまった場合、売買契約が締結している状態であれば、売主と買主の双方に契約を履行する義務が生じます。そのため、売主の死亡によって売買契約が無効になるこということはありません。なくなってしまった売主の方に変わって相続人の方が手続き等を進めていく必要があります。
特に相続登記が必要となるケースでは、売買代金の決済日までに様々な手続きを済ませなければならない可能性があります。