近未来の住宅購入!? 未来では住宅購入がお安くなる?
◆D-LINE不動産 不動産豆知識2021年 『江東区・墨田区・中央区・港区
今回は日本での実用化はかなり先の話になりそうですが、建築分野で革命を起こすかもしれない新技術についてご説明いたします。
■住宅を3Dプリンターで建築!?
まずは動画をご覧ください。
https://youtu.be/SvM7jFZGAec
<説明記事>
https://contech.jp/icon/
アメリカのICONという会社が開発した3Dプリンターで建築する新技術です。
動画の住宅を制作時間24時間、制作費用約1万ドル、という時点で建築分野の革命と言っても過言ではないと思います。
この動画は2019年のものですが、紹介されている「Vulcan Ⅱ」は既に商用化されていて、ICONはNASAの宇宙空間での建築システム「Olympus Construction System」の研究開発にも参加しているみたいです。
https://www.axismag.jp/posts/2020/10/287651.html
2017年スタートアップとは思えない急成長ですね。
■住宅業界がひっくり返る…かも
この技術が日本で実用化されれば日本の住宅業界がひっくり返ります。
家を新築するとなると建築に数か月かかりますし、なにより建築費用がかかります。
平均的な住宅を建築するにしても2000万円前後はかかる訳で、それが数百万で済むとなると住宅に対する考え方が変わりますよね。
日本の気候には木造が適していると言われますが、こんなに安く建てられるならコンクリート製でも問題ありません。悪くなったら建て替えれば良いだけですから。
下手すると古い家をリフォームするより安上りなので、一般住宅はこういった建築物に変わっていくでしょう。
日本は人口減少社会なので、かつてのように住宅用地が足りない、ということもなさそうです。
建築にお金がかかるマンションは土地の価値が高い都心部に限定され、普通の人は郊外に住むという社会になるでしょう。
建築費にこれだけ価格差ができれば余程の理由がない限り、一般消費者がマンションに手を出すことは考えられなくなります。
それほどに日本の家計収入に対する住居費は高すぎるのです。
冒頭でご紹介した記事も貧困地域における住宅問題を解決する目的のプロジェクトなので、まさに住宅のイノベーションと言えるでしょう。
■日本での実用化はまだまだ先ではないかと思われます
残念ながら日本での実用化はまだまだ先です。
色々理由はありますが、大きく三つ挙げたいと思います。
一つは災害対策(特に耐震性)です。
日本は地震大国です。それが故に一般住宅であろうとも高い耐震性能が求められます。
コンクリートの建築物は内部に鉄筋を配筋して強度を確保する必要があるのですが、鉄筋コンクリートと同等の強度を持たせるのは3Dプリンタでは難しいと思います。
配筋だけ行ってあとは3Dプリンタに任せるというのも考えられなくはないですが、これでは建築費を圧倒的に軽減するというのは難しいでしょう。
安く建築できるのは魅力ですが、地震に耐えられないのであれば意味がありません。
二つ目は産業構造です。
住宅業界にはたくさんの人が従事しているのですが、こういった機械化が進むと住宅業界に従事する人達が職を失うことになります。
こういった産業全体に影響を及ぼすイノベーションは産業革命まで遡らなくても比較的最近でもよく見られます。(フィルムカメラがデジタルカメラに席巻されて、それが携帯電話・スマートフォンに置き換わるなど)
当然ながら既存技術に従事する人は新技術に反発する訳で先に述べた性能面が議論されることになります。
住宅業界は大きな産業なので、今までの感覚だと10年単位で時間が消費されることが目に見えています。
都市が丸ごと失われるような異常事態でもない限り、現実性はないと私は思います。
三つ目は資産性です。
3Dプリンタによる住宅は廉価住宅という位置づけになるでしょう。
しかし安価で新築できる市場が形成されると既にある住宅の価値を維持できなくなってしまいます。
最低限の性能が確保されるなら廉価住宅と言われても、圧倒的に価格が安いとなると、新築の方が良いと判断する人が多いでしょう。
恐らく機械を設置するスペースが必要になるので、今のような2階~3階建てでないと十分な居住面積を確保できない、今の住宅地は価値がなくなり、郊外の広い土地を求める流れになりそうです。
都市部では昔広く建てた家(庭付き一戸建てって言われてましたよね)を業者が買い取って、2戸~3戸に分割して2階~3階建て住宅を供給するモデルが一般的ですが、こういった住宅を買った人は建物だけでなく土地も処分に困ることになります。
また、先ほども触れましたが、マンションは高すぎるのでその価値を維持できなくなります。
バブル期に建てられた建物は今では考えられないほど高額だった建物が多く、支払った住宅費と今売れる価格の差が大きすぎてなかなか売ることができないということがよくありますが、それと同じ状況になりそうです。
家が安くなればいいじゃないか、というのは家を買う人の意見ですが、住宅資産の評価が下がるのは、日本全体で資産を目減りさせてしまうことになりかねないので、資産という面で見ても安すぎる住宅というのは悩みの種になりかねません。
■少し遠い未来を踏まえて…
直近で3Dプリンタによる建築が一般化するわけではないので、これから家を買う方にはあまり関係のない話に思えるかもしれません。
今回お伝えしたいことは、先ほどご説明した、住宅を高く買ってしまったため売るに売れない売主になってしまう可能性があるということです。
狭すぎる土地やマンションはその価値を一気に失ってしまう恐れがあるのです。
文中でご説明した通り、今の常識が通用するのであれば、新技術が認証されるまでに相当な時間がかかります。
ただ日本は災害大国です。例えば東京を中心とした大地震が発生したとします。
多くの人が住居を失います。
当面は仮設住宅で乗り切ったとしても、住宅を再建築できる人はひと握りで、それでも2重ローンで長らく苦しむことになります。
そういった一時的な住宅不足を解消するために、多少性能に問題があったとしても圧倒的に安価であれば新技術を取り入れるというのは十分に考えられます。
そもそも仮設住宅は性能が高いわけではないので、長期間利用できる仮設住宅と捉えられれば一気に一般化が進むと思われます。
もし3Dプリンタのようなイノベーションが起きてしまったら、一般化する前に「損切り」する覚悟が必要で、今から家を買う方はご自身の満足度だけを重視するのではなく、なるべく流動性の高い住宅選びが大切だと言えるでしょう。