耐震等級てなあに!?

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耐震等級

少し専門的な、耐震基準に関するややこしい耐震等級の話です。
2000年にスタートした制度なので、そろそろ性能評価を受けた物件が中古で流通され始める頃だと言えます。
結論としては耐震等級を謳う物件があったら、まずは評価書の有無を確認しましょう、ということになります。


まずは耐震等級という制度についてご説明します。
住宅性能表示制度は2000年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく制度です。
耐震等級は住宅性能表示制度で示される指針の一つです。
つまり、先日ご説明した建築基準法の耐震基準や耐震診断の基準とは別の耐震基準ということになります。
耐震等級1は建築基準法の耐震基準と同等と言われますが、設計だけでなく施工・完了検査を踏まえて評価されるのが大きな特徴です。
(新築時には行政による完了検査がありますが、住宅性能表示制度では専門の評価機関による現場検査があります)

耐震等級2は建築基準法のおよそ1.25倍、耐震等級3はおよそ1.5倍の強さと言われます。
耐震等級1の物件でも、性能評価を受けていない物件に比べれば安心ですし、耐震等級3の物件は一般的な家屋よりも地震に強いと判断できるでしょう。
それでは新築時に住宅性能表示制度を利用していない物件で、耐震等級を取得したい場合はどうすればよいのでしょうか。
既存住宅でも手続きを踏まえれば住宅性能評価を受けることは理論上可能です。
しかし、住宅性能表示制度は、見えないところは評価できないという仕組みになっているので、既存住宅という時点で耐震等級1も難しいと言われてきた制度になります。
(余談ですが、品確法の教訓を受けて、先日ご説明した「木造住宅の耐震診断と補強方法」の基準が新たに設けられることになったという経緯があります)
昨年4月に住宅性能表示制度が改正され、既存住宅版の耐震等級というものが定められました。
既存住宅版耐震等級は、先日ご説明した「木造住宅の耐震診断と補強方法」の基準(診断結果1.0以上)で等級3となる制度です。

 

従来の耐震等級3と既存住宅版耐震等級3は同等?

いろんな基準が出てきたので整理してみます。
耐震等級1は建築基準法と同等とされます。
耐震等級2は建築基準法のおよそ1.25倍とされます。
耐震等級3は建築基準法のおよそ1.5倍とされます。
「木造住宅の耐震診断と補強方法」の基準は建築基準法と同等とされます。
既存住宅版耐震等級3は「木造住宅の耐震診断と補強方法」の基準と同等とされます。
以上の事から従来の耐震等級3と既存住宅版耐震等級3は同等でないことは明らかですね。
住宅性能表示制度は長期優良住宅制度でも利用された、建築基準法を超える性能を指し示す制度なので、既存住宅版耐震等級が今後どのように運用されるのか楽しみです。
さて実際の取引で困るのが、広告の謳い文句だけでは新築時に性能評価を受けた物件かどうかがわかりにくい点です。

当然ながら耐震等級を取得している物件は評価書が発行されているはずなのですが、
新築時の売り文句で耐震等級3をクリア!とか、耐震等級3相当とか、実際には等級を取得していないのに、あたかも評価済みであるかのような売り方をしている物件が多く見られました。
当時その売り文句を信じて家を買った人が、売却にあたって耐震等級3の物件であることを伝え、評価書の存在を確かめもしないで不動産会社が「新築時に耐震等級3をクリア」と再び微妙な表現で買主に説明してしまう…。

冗談のような出来事ですが、これは実際に問い合わせいただいた内容です。
評価書の存在を確認するようにアドバイスさせていただいたところ、評価書はなく「新築時に耐震等級3をクリア」と謳っている割に新築時の図書もあまり残っていないお粗末な状況でした。
この耐震等級3“相当”は割とよく目にする表現です。
住宅性能表示制度を利用したかどうかではなく、設計の基準として建築基準法の1.5倍と言われる耐震等級3レベルの基準はクリアしていますよ、という意味で利用されます。
リフォームの現場では耐震改修の効果をわかりやすく表現することが難しいので(実際の工事の効果を実感するには大地震を待つしかないです)
判断のものさしとして耐震等級という明確な基準が用いられるのです。
前述の通り、これまでは既存住宅で耐震等級を取得することが現実的ではなかったため、基準だけを利用するという歪な運用がされていました。
耐震等級3“相当”の耐震改修を行った人が、耐震等級3であると勘違いして売りに出してしまう…。十分に考えられ得る事態です。

戸建て住宅の耐震診断や耐震改修がリフォームメニューとして取り扱われるようになってだいぶ経ちますので、今後は「耐震」を売り文句にする物件が増えてくると思います。
冒頭の結論に戻りますが、「耐震」を判断するには根拠となる書類の確認が必要になります。
第三者が判断できる根拠が残されていなかったら、その「耐震」はなかったことと判断せざるを得ないのです。
先日から耐震の基準について長々と説明したのには理由があります。
耐震の基準は一つではありません。
問題なのが、国が進める各種住宅取得支援制度によって、用いられる耐震の基準が異なるという点です。
住宅ローン減税と既存住宅売買瑕疵保険では耐震の基準が同一ではありません。
耐震基準の内容もそうなのですが、各種制度の手続きにも精通した人でないと運用を誤ってしまう恐れがあります。

 

建築士による耐震性の確認が必要

住宅の性能についてほとんど知識がない不動産会社が多いですし、耐震基準について詳しい建築士でも国の制度には疎いということが多いです。
中古住宅を安心して取引するためには、各種住宅取得支援制度に詳しい仲介会社選びが重要で、購入判断材料として建築士による耐震性の確認が必要だと言えます。
確定申告に向けて、毎年この時期は耐震に関するお問い合わせや相談が増えます。
手遅れになることが多いので、購入したい物件が決まったら、耐震について確認することをお勧めいたします。