ご存知でしょうか!? 片手仲介・両手仲介!!
安心安全な不動産取引を実現するために私たち不動産仲介会社が売主様、買主様の間に立ってお取引を進めるのですが、大きく分けて、売主様・買主様双方の仲介を1社が担当する形と、売主様、買主様がそれぞれ違う仲介会社が担当する形があります。
双方の仲介を1社が担当する取引を「両手仲介」、それぞれに違う仲介会社が担当する取引を「片手仲介」と呼びますが、今回はそれぞれの特徴と懸念される問題点についてご説明いたします。
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■片手仲介
下図のように、売主様、買主様それぞれに別の仲介会社が担当して、不動産取引を進めます。
売主様は少しでも高く売りたいので、その要望を売主様側の仲介会社へ伝えます。買主様は少しでも安く買いたいので、その要望を買主様側の仲介会社へ伝えます。
2社の仲介会社は、依頼主からの要望を念頭に、お互いの妥協点を探る交渉を行います。交渉によって売主様も買主様も納得できる妥協点が見いだせれば、取引成立となります。
取引成立後、売主様側の仲介会社は売主様から、買主様側の仲介会社は買主様から、それぞれ売主様・買主様の片方からしか仲介手数料をいただかないので、片手仲介と言われます。
■両手仲介
下図のように、1社の仲介会社が、売主様、買主様双方から依頼を受けて取引を進めます。
取引が成立すると、担当した仲介会社は、売主様、買主様双方から仲介手数料をいただくので、両手仲介と言われます。
取引に関わる事業者が少ない方が無駄がないと思われがちですが、仲介手数料は上限が法律で定められているので、両手仲介でも片手仲介でも、売主様・買主様が支払うべき仲介手数料のルールは同じです。
1回の取引で売主様・買主様双方から報酬が得られる仲介会社が最も得をする取引の形とも言えます。
■両手仲介の問題点(利益相反)
売主様は少しでも高く売りたいと考えます。買主様は少しでも安く買いたいと考えます。売主様と買主様の関係は利益相反関係です。
ここで売主様と買主様の間に立って妥協点を見出すべく動くのが仲介会社の役割となりますが、両手仲介の場合、間に立つ仲介会社は、売主様の味方なのでしょうか?あるいは買主様の味方なのでしょうか?
このどっちつかずの立ち位置が取引における問題の原因となりやすいことが両手仲介が抱える懸念材料と言えます。
例えば、不動産売買仲介業に携わる人に、あなたの仕事は何ですか?と質問すると、十中八九「家を売ることです」と回答します。
買主様側の仲介会社が「売る」側に回ってしまったら、買主様には味方がいないことになってしまいます。
事実、不動産仲介業は「売り」の方に軸足を置く傾向にあり、「家を売りつけられる」という印象を持つ消費者が絶えないのが現状です。
また、間に立つ仲介会社が、どちらの味方になるのかは、需要と供給で変わりますので、家を売却したい人が増えて、家を買いたい人が少なくなれば、買主様側に軸足を置く事業者が増えることが容易に想像できます。
様々な要因によって両手仲介の取引になることがありますが、両手仲介の取引は、事業者にとっては最良ですが、消費者にとっては必ずしも最適な形とは言えない、ということを把握しておいた方が良いと思います。
■両手仲介の問題点(機会損失)
仲介会社が両手仲介を成立させようとするがあまり発生する弊害が「囲い込み」です。
囲い込みは法律で禁止されている行為ですが、購入希望者に対して、売り出されている物件数が少ない場合などに横行する、不動産業界が抱える問題です。
売主様は両手仲介だろうが片手仲介だろうが、なるべく高く・なるべく安く売ることができれば、問題ありません。
しかし不動産仲介会社は両手仲介を成立させた方が収益が増えるため、頑張って両手仲介を狙います。
最近は不動産ポータルサイトに掲載するという形で売却活動を行うことが主流で、当然ながら、売主様側の仲介会社とは別の仲介会社を介して物件の問い合わせが入ります。
この時に何らかの理由を付けて他社の購入希望者を勝手にお断りしてしまうのが「囲い込み」と呼ばれる行為です。
囲い込みの問題は、別の仲介会社を介して物件の問い合わせがあったことが売主様に伝達されないことです。売主様は知らず知らずのうちに機会損失を被ることになります。
もちろん悪質な囲い込みを行う事業者はほんのひと握りなのですが、根本的に囲い込みを根絶する方法が確立されておらず、両手仲介は消費者がデメリットを被る可能性のある取引であることを念頭に、取引を任せようと思う不動産会社とよく相談して、その会社の取り組み姿勢などを確認した方が良いと思います。
以上、両手仲介、片手仲介の説明でした。
両手仲介だからすべてがダメなわけではなく、様々な問題を生じる原因となりうる取引形態であることを踏まえて、売主の立場になる時も、買主の立場になる時も、依頼しようとする不動産会社が本当に自分の味方なのか?という視点で判断することをお勧めいたします。