重要検討項目です! 既存住宅売買瑕疵保険について!!

本年度の税制改正で住宅ローン減税の築後年数要件が緩和され、1982年1月以降に建てられた建物であれば築後年数要件を満たすことになりました。
これまではマンションなどの耐火住宅の場合は25年以内、木造戸建てなどの非耐火住宅の場合は20年以内という要件が定められており、この築後年数要件に抵触する物件は耐震性の証明がなければ住宅ローン減税が利用できませんでした。
今回は住宅ローン減税と既存住宅売買瑕疵保険の関係や、中古住宅購入時における既存住宅売買瑕疵保険の重要性についてご説明いたします。

■瑕疵保険は住宅ローン減税のためのもの?

先日全国規模で建物インスペクションなどを行っている事業者と瑕疵保険法人と打ち合わせを行いました。
その際に伺ったのが、今年になってから建物状況調査も既存住宅売買瑕疵保険も取り扱い件数が大幅に減少しているということでした。
これまでは住宅ローン減税の築後年数要件に抵触する物件の場合、耐震基準適合証明書を取得するか、既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書を取得しないと住宅ローン減税を利用することができなかったため、瑕疵保険の活用がある程度進んでいたのですが、今年の税制改正以後は瑕疵保険の申し込みがピタッと止まってしまったようです。
本来、既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅取引におけるトラブル解決のための資力確保が目的で、買主保護の大切な仕組みなのですが、現場レベルでは単なる住宅ローン減税のための手段としか捉えられていなかったようです。

■既存住宅売買瑕疵保険の意義

既存住宅売買瑕疵保険に加入するには、瑕疵保険法人が定める検査基準に合格する必要があります。
既存住宅状況調査技術者登録を行った建築士などが主に建物の劣化に関する調査を実施し、雨漏れなどの劣化事象が確認されたら改修工事を行わなければ既存住宅売買瑕疵保険に加入することができません。
言い換えると既存住宅売買瑕疵保険に加入できる物件は、一定の基準をクリアした安心材料のある物件と言えます。(安心な物件ではありません。あくまでないよりあった方が良いというレベルの判断です)

中古住宅の取引で既存住宅売買瑕疵保険に加入する目的は保険そのものではなく、加入までのプロセスにあると思います。
第3者である建築士が検査を行い、瑕疵保険法人によるダブルチェックも行われます。
建物インスペクションを全く行わない取引に比べれば、第3者の目が入る分安心感が増します。

第3者によるチェックならインスペクションを実施すれば良いのではないか?という意見もあると思います。
一般的なインスペクションは非破壊目視のものが主流なので、見えない部分での劣化が懸念されます。
また、検査ミスや判断ミスなどの可能性もゼロではありません。
既存住宅売買瑕疵保険の制度を利用すると、建築士が行った調査内容を瑕疵保険法人が追認して保険を掛けるというプロセスとなるため、万が一の時には保険で対応できることを考えれば、検査だけを行うよりも安心できることはご理解いただけると思います。

■本質は今劣化があるかどうかではなく、この先どうなるかを考えること

瑕疵保険の検査は現時点で発生している劣化の有無を判断します。
新築とは違うので中古住宅購入の際は、何らかの劣化改修が必要になることを前提に予算を組んでおい、悪い箇所は直して住み始めるというのが現実的な判断です。
悪いところを見ないふりをしても遅かれ早かれ迷惑をこうむるのは買主自身なので、事前にきちんとチェックして疑わしき箇所は徹底して直した方が安心です。

住宅は購入して終わりではありません。
それぞれの部位には耐用年数が想定されていて一定間隔で適切なメンテナンスを実施しないと建物の性能を維持することができません。
そのためマンションは長期修繕計画に基づいて将来必要になる修繕金を積み立てる仕組みがあるのですが、戸建ては個人の裁量に任されるため、「戸建てはマンションと違って修繕積立金がないからお得だ」というような勘違いをしてしまう方がいらっしゃいます。

今後のリフォームに必要な資金を考慮すると、建築士による調査を行って、現時点で問題のある個所はもちろん、現在問題はなくても想定耐用年数を超えている部位や、近い将来修繕が必要になる箇所などは、住宅購入時にまとめて改修工事を行っておくと安心です。

今回ご説明させていただいたように既存住宅売買瑕疵保険は安心・安全の保険制度もさることながら、保険加入のプロセスで第3者が関与する点、劣化という曖昧な事象に対する判断基準など、中古住宅を購入する上で欠かせない制度と言えます。
決して住宅ローン減税を適用するため、というような消極的な活用が本質ではありませんので、特に中古戸建てを検討される方は既存住宅売買瑕疵保険の活用をお勧めします。